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 ドイツでは権利も法も「レヒト(Recht)」といいます。

 ややこしいですから、権利にあたるものは、「主観的意味におけるレヒト(主観的レヒト:subjektives Recht)」といい、

法にあたるものは、「客観的意味におけるレヒト(客観的レヒト:objektives Recht)」といいます。

 行政事件訴訟法上の「主観訴訟」(抗告訴訟・当事者訴訟)は、「個人の権利救済」を目的とするものですが、その名称は主観的レヒトに由来しているといわれています。

 行政の違法行為の是正を通じ「法秩序」の保護を目的とする行政事件訴訟は、ご存知のとおり、「客観訴訟」(民衆訴訟・機関訴訟)ですが、これももうおわかりですね。

 名称の由来は、客観的レヒトにあるということになります。

 ドイツの憲法学説では、ドイツ憲法(ドイツ連邦共和国基本法)上の基本権(基本的人権)には、

1.権利・人権、すなわち、主観的レヒトとしての側面と、

2.法秩序を維持する、すなわち、客観的レヒトとしての側面

があると考えたりします。

 そして、主観的レヒトとしての基本権は、国家に対してのみ効力を持ち、私人間に効力を及ぼすことはないが、

 客観的レヒトとしての基本権は、法秩序全体に対して効力を及ぼすと考えます。

 そして、法秩序全体に効力を及ぼすとされる客観的レヒトとしての側面を持つ基本権が、法秩序全体に効力を及ぼす場合、私人間に直接効力を及ぼす(直接効力説)のか、間接的に効力を及ぼす(間接効力説)のかが論じられることになります。

 「うん。何かに似ている??」

 そう、日本の直接適用説・間接適用説のモデルの起源はドイツ憲法理論にその源流があるものと考えられます。

 本場ドイツでも、日本と同じように「間接効力説(間接適用説)」が、ドイツ連邦憲法裁判所において採用されています。

 ドイツで間接効力説が採用されたのは、以下のような事件(リュート事件)に対する判決である「リュート判決」においてです。

リュート事件とは、

ナチスに肩入れし、第二次世界大戦後追放された、映画監督(ハルラン)が戦後復活するにあたり、それを批判し、市民に対し当該監督の映画を見に行かないようキャンペーンを張った「リュート」という人物に対し、

リュートに批判された側の映画会社(ドムニク映画会社他1社)が下級裁判所にリュートのキャンペーン活動禁止の仮処分申請をしたところ認められたのですが、

これに対して、リュートが憲法裁判所に憲法異議申立を行い、憲法裁判所がリュートの主張を認めたというものです。

 つまり、私人間の問題であるにもかかわらず、リュートの「表現の自由」という基本権(人権)を裁判所が救済したという形になっているわけですね。

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 リュート判決においてドイツ連邦憲法裁判所は、

ドイツ憲法上の基本権は、価値中立的秩序ではなく、客観的な価値秩序を定立するものであり、しかもその価値体系は、ドイツ憲法上の根本的決断として、すべての法領域で通用するというような考え方を打ち出します。

 価値中立的とは、基本権が価値を計る物差しにはならないという意味だと思いますが、上記はそうではないといっているわけですね。

 基本権は、価値を計る物差しであり、客観的な(客観的レヒトすなわち、「法的」)価値を持ち、それは「法」(客観的レヒト)秩序全体に効力を及ぼし、

民法等を含めたすべての法領域で通用するものであるといっているものだと思われます。

 ゆえに、全ての民法上の規定も、基本権の価値観と矛盾するものであってはならず、

民法等を解釈するにあたっても、当該価値観に基づき解釈されなければならないという結論につながります。

 この考え方は日本の間接適用説に瓜二つとまではいえないまでも、よく似た考えですね。

 おそらく日本の間接適用説は、このリュート判決の影響を受けたものだと思われます。

 では、以上を確認するため以下の問題を考えて見ましょう。

問題:

 私人間における人権規定の効力に関する以下の記述は、最高裁判例が述べるところであるか否か。

(行政書士試験 平成18年度憲法科目「問題3:選択肢3」より以下引用)

「 日本国憲法は価値中立的秩序ではなく、その基本的人権の章において客観的な価値秩序を定立している。この価値体系は、憲法上の基本決定として法のすべての領域で通用する。いかなる民法上の規定もこの価値体系と矛盾してはならず、あらゆる規定はこの価値体系の精神において解釈されなければならない。 」

(引用終わり)

正解は以下です。

| 

正解:妥当でない。

 問題文の内容は、リュート判決において判示された原則を表したものだと思われます。

 前述したように日本の「間接適用説」の源流となった考え方ではあるのですが、全く同じものではなく、また日本の最高裁も、この考え方を丸呑みしたものとは思われませんので、最高裁が述べるところではないということとなり、妥当ではありません。

 なお、市販過去問題集では、本問を「直接適用説に基づくものであるので妥当ではない。」等と解答するものが見受けられますが、

元になっているのがそもそもリュート判決だと思われますので、直接適用説とは相反しますし、

また問題文にも、憲法上の価値体系をもって民法の解釈をすべしと読めることを書いているわけですから、直接適用説の説明ではないことは明らかだと思います。

 以上から当ブログでは、本問を、ドイツ判例理論に基づく間接効力説を指しているものだと考え、その意味で、最高裁判例が述べるところではなく、妥当ではないと判断しておりますので予めご了承のほどを宜しくお願い申し上げます。

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