大阪:佐々木行政書士・マンション管理士事務所ブログ

法務・会計・心理学の1級資格を有する、ビジネス・暮らしの総合アドバイザー

2007年09月

大阪・寝屋川の行政書士・マンション管理士・FPです。東京商工会議所主催ビジネス実務法務検定試験(R)1級・日商簿記1級・日心連心理学検定(R)特1級の3つの1級資格を保持する、おそらく日本で唯一のトリプル1級ホルダーの行政書士だと思います。多角的な視点から思考することができる総合的なサポーターを目指しています。どうぞよろしくお願い申し上げます。

お問い合わせは、E-MAIL  fwkt0473@mb.infoweb.ne.jp  まで

行政書士・マンション管理士・1級建設業経理事務士 佐々木 賢 一

(商工会議所認定 ビジネス法務エグゼクティブ(R)・日心連心理学検定(R)特1級認定者(第16号)・日商簿記検定1級認定者・FP)

大阪府行政書士会所属(会員番号4055)・大阪府行政書士会枚方支部所属

Website: http://sasakioffice.la.coocan.jp/

秋日和、絶好の憲法学習日和・・

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 絶好の秋日和とは言わないまでも、やっと秋らしい気候になってきたような感じがします。

 これからどんどん、勉強するにもよい季節になっていくと思いますので、ラストスパート是非がんばってくださいませ。

 さて、今日は絶好の秋日和ではないとしても、絶好の憲法(統治機構編:内閣)の学習日和ではあります。

 本日、福田内閣が発足し、夕方・深夜のニュースではこれ一色になると思うのですが、

是非、六法を手元に置いて、憲法条文を参照しながら、当該ニュースをご覧頂ければと思います。

 憲法69条、70条の規定に該当する場合は、必ず総辞職をしなければなりません。

 なお、内閣総理大臣の辞職は、70条上の「内閣総理大臣が欠けたとき」に含まれます。

 安倍総理が今朝、辞職ということになったので、70条に基づき、安倍内閣も午前中の閣議で、総辞職となったわけです。

(というか、理論上内閣総理大臣だけの単独辞職はありえず、

総理が辞職したら、機械的に内閣も総辞職しなければならないということになります。)

 70条に基づき、内閣総辞職となっても、71条に基づいて、

「内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行」なわなければなりません。

 当該内閣を「事務引継ぎ内閣」といいますが、福田内閣が発足するまで、安倍内閣は、「事務引継ぎ内閣」状態にあります。

 当該事務引継ぎ内閣は、事務引継ぎだけが職務となるので、

重要事項、例として衆議院の解散等は行え得ないと解されています。

 さて、新内閣が成立するまでの流れですが、総辞職を決定したら、

まず、国会法64条

(内閣は、内閣総理大臣が欠けたとき、又は辞表を提出したときは、直ちにその旨を両議院に通知しなければならない。)

に基づき、

 総辞職の旨を衆参両議院長へ通告しなければなりません。

 これを受けて、衆参両議院で、次の内閣総理大臣の指名が行なわれます。

 これは、以下の憲法67条1項の規定に基づくものです。

「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。」

 現在、衆参両院はいわゆるねじれ現象と呼ばれる状態になっており、

衆議院は与党が、参議院は野党がそれぞれ優勢な形になっています。

 政府・与党VS野党の対抗関係が、衆議院VS参議院という憲法形式上に現れる、進んだ政党国家現象が露見しています。

 ですので、衆議院では、自民党総裁が、参議院では、民主党代表が、内閣総理大臣として別々に指名されることになります。

 こんなことは、そうそうありません。

 衆参別々総理大臣指名は、1998年以来9年ぶりで、今回を入れずに、以下の3回しかないそうです。

(資料)

1948年 芦田均(衆)VS吉田茂(参) (芦田均が最終国会議決)

1989年 海部俊樹(衆)VS土井たか子(参) (海部俊樹が最終国会議決)

1998年 小渕恵三(衆)VS管直人(参) (小渕恵三が最終国会議決)

(資料終わり)

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 では、このように衆参で異なった内閣総理大臣の指名が行なわれた場合、どうなるのでしょうか?

 そう、9年ぶりに以下の条文のお出ましということになるわけです。

(実社会にあまりお出ましできなくて、寂しいからかどうかはわかりませんが、行政書士試験等の法律系資格試験には、この条文、よくお出ましします・・。)

日本国憲法67条2項

「衆議院と参議院とが異なつた(内閣総理大臣の)指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき(中略)は、衆議院の議決を国会の議決とする。」

 この67条2項さん、久しぶりに日のあたるところに出てこられて、今日は、さぞかし喜んでいることでしょう。

..\(・◇・@)/..

 67条2項さんは、日頃は、憲法研究者や法律系資格試験の受験生ぐらいにしか知られるに過ぎない存在なのに、

(しかも、受験生には好かれているというよりは、うっとしいがられている存在ではないかと思います)、

今日は全国民の前に晴れ晴れしい、姿を現すことができるわけですから・・。

 ともあれ、次なる手続として、憲法67条2項に基づき、

法律(国会法)の定めるところにより、

両議院の協議会(国会法上は「両院協議会」という)なるものが開かれることになるわけです。

 国会法86条2項は以下のように規定しています。

「内閣総理大臣の指名について、両議院の表決が一致しないときは、参議院は、両院協議会を求めなければならない。」

 さらに、国会法88条が、

「(国会法84条2項の例を除いて)一の議院から両院協議会を求められたときは、他の議院は、これを拒むことができない。」

と規定していることから、

まず、参議院が両院協議会開催を求め、

そして、衆議院はこれを拒否できませんので、

結局、両院協議会が開かれることになります。

 両院協議会は、各議院において選挙された各々10人の委員で組織されます(国会法89条)。

 そして、各議院の協議委員の各々3分の2以上の出席がなければ、議事を開き議決することができません(国会法91条)。

 なお、総理大臣指名においては、両院協議会で、衆議院(今回は福田総裁が指名されました)、参議院(今回は小沢代表が指名されました)で指名された人以外に関する人を議題とすることはできません。

 両院協議会においては、協議案が出席協議委員の3分の2以上の多数で議決されたとき成案となりますが(国会法92条1項)、

与野党が激しく対立している今回は当該議決がされるわけがなく、協議は必然的に不調に終わります。

 となると、当該事実が、

憲法67条2項の

「両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき」という、

要件に合致することになるので、

 「衆議院の議決を国会の議決とする。」という

法的効果が生じ、

自民党福田総裁を内閣総理大臣に指名するという衆議院の議決が国会の議決となるわけです。

  なお、過去問にも出題されているのですが、内閣総理大臣の指名については、予算と違って、衆議院に先議権はありませんので、注意が必要です。

 総理大臣指名に関する衆参本会議の模様は、

憲法57条(両議院の会議は、公開とする。)の規定により、公開されているので、ニュース映像としてみることができますが、

両院協議会の協議の模様は、ニュース映像としてみることはできないことでしょう。

 なぜなら、国会法97条が、「両院協議会は、傍聴を許さない。」と規定しているからです。

 残念・・。

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 この後の流れは、まず、憲法68条1項

(内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。)

に基づき、組閣が行なわれます。

 総理大臣及び国務大臣は文民でなければなりません(憲法66条2項:文民統制原則:シビリアンコントロール)。

(文民とは何かということについては、争いがありますが、

現在職業軍人(現職自衛官を含む)でなく、またこれまで職業軍人であったことがない者

と解するのが有力説となっています。)

 組閣が終わると、その旨を事務引継ぎ内閣総理大臣(安倍旧総理大臣)へ通告し、

事務引継ぎ内閣(安倍内閣)は、憲法3条、6条、7条に基づき、

新内閣総理大臣任命及び国務大臣認証に関する、

天皇への助言と承認を行なうため最後の閣議を行なうということになります。

(参考憲法条文)

3条

「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。」

6条

「天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。」

7条

「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。」

同条5号

「国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。」

(参考憲法条文終わり)

 事務引継ぎ内閣の最後の閣議が終わると、

新内閣総理大臣と新国務大臣の天皇による任命(憲法6条)及び認証(憲法7条)が皇居において行なわれます。

 (組閣に時間がかかる場合は、内閣総理大臣の任命だけが前もって行なわれ、

組閣終了するまで内閣総理大臣が全国務大臣の職務を兼務するという場合もあります。)

 任命(式)及び認証(式)が終了すると同時に、

安倍内閣総理大臣及び安倍内閣の国務大臣は自動的にその地位を失うことになります。

前記の憲法71条に「内閣は、あらたに

「内閣総理大臣が任命されるまで」

引き続きその職務を行ふ。」とあるからですね。

 任命及び認証を終え、新内閣が成立したら、その旨を国会に通告し、一連の手続は終了するということになります。

 六法片手にリアルタイムのニュース映像を見ながら、今日の当ブログの記事をお読みになると、憲法条文が映像とともに鮮烈に脳裏に残ります。

 こんな機会は滅多にないので、今日は絶好の憲法学習日和というわけです・・。

 では、今日の内容の確認として、以下の正誤問題を解いてみましょう。

以下の記述は妥当か否か。

(平成16年度行政書士試験問題7より以下、引用)

1.

「新しい内閣総理大臣が、まだ国務大臣を一人も任命していないうちは、前の内閣が引き続き職務を遂行する。」

(平成11年度行政書士試験問24より以下、引用)

2.

「内閣総理大臣の指名は、衆議院が先に議決しなければならず、その後に行われる参議院の議決と異なった場合は両議院の協議会を開き、それでも意見が一致しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。」

(引用終わり)

正解:

1.妥当ではない。

 憲法71条により、新しい内閣総理大臣が任命されれば、事務引継ぎ内閣の引継ぎも終了し、その地位を失います。

 前述したように、組閣が遅れ国務大臣を新総理が一人も任命していなければ、全国務大臣を総理が兼務しますので、総理任命後は、このような形で新内閣が職務を遂行するということになります。

2.妥当ではない。

 内閣総理大臣指名に関しては衆議院に先議権はありません。

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 前回の試験委員対策的なテーマの中で、「政党国家現象」という用語が出てきました。

(KCC答案練習講座に参加されている方は、憲法の答練講座で試験委員対策として今回のテーマに関する出題がありますので、受講生の方で、このブログをご覧になっている方は、予習として、今回の内容をご利用いただけます。)

 歴史的な過程の中で国家意思の形成に政党が事実上主導的な役割を果たしてきたわけですが、

そのために、旧来的な議会と政府との対抗関係が、現代においては政府・与党と野党との対抗関係に変遷している状況を「政党国家現象」といいます。

 衆議院第一党集団(つまり、議会、立法権を牛耳っている人達)である自民党の総裁選は、

事実上、内閣総理大臣(政府、つまり行政権を牛耳る内閣の首長)を選ぶ手続でもあります。

 となると、憲法条文を勉強した方は、ちょっとまてよとなりますね。

 立法権と行政権は、対抗し、相互牽制しながらやっていかないといけないのに、

その事実上のトップが、どちらも同じ人ってどういうこと?という素朴な疑問がわいてくるのではないかと思います。

 そんなので、議会(衆議院)側の内閣に対する牽制の切り札である、

内閣不信任案を決議できるのか?

内閣側も、同様の切り札である解散権を行使できるのか?

憲法の規定は絵に描いた餅になるではないか!

という感じになりますね。

 だって、議会側・政府側のトップが事実上は同じなわけですから・・。

 これでは、与党で仲間割れが起きたときぐらいにしか内閣不信任案決議の可決や衆議院の解散はありえず、なんだかなあという感じですね・・。

(実際、昨年の衆議院解散総選挙も郵政民営化を巡っての自民党内の内紛が原因でしたね。)

 というか、仲間割れした方が、権力分立的な権力間の相互牽制が期待でき、

 世間で悪の権化のように言われている、

自民党派閥政治バンザイ!になるではないですか。

 つまり与党が、絶対的に強く、野党が政権を取れる兆しさえないような(今後はわかりませんが)、

今までの日本政治のような状態の中で、

かつ、与党が一枚岩で内紛なんて絶対ないほどのまとまりを見せていたら、

そっちの方が国民にとっては、怖くて、それこそ、内閣不信任案決議可決も衆議院解散もありえず、

まさに権力分立思想は完全に形骸化してしまうということになります。

 なので、強すぎる与党であるならば、派閥があった方がいいということになりますね。

(そうでなくても、政党内に派閥があった方が、より複雑な権力分立構造になるので、よい面があるような気はするのですが・・。

まあ、ただ、世間で一般的に言われている「派閥は悪い」というイメージが何の疑問もなく、

頭の中に完全インプットされている場合は、

そういう視界も開けてこず、ただただ「悪い」という機械的な結論しかでてこないのかもしれないのですが。)

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 三権分立思想ができたときは、「政党」なるものの存在は予定されていなかったんですね。

 むしろ、国家と政党との関係は敵対関係でさえあったようです。

 政党と国家との関係はこのように、

まず、敵視状態から始まり、無視、承認・法制化、憲法編入という段階に進んでいくと解する考え方があります。

 この考え方を、「トリーペルの発展図式」といいます。

 わが国の政党はトリーペルの発展図式の承認・法制化段階にあると一般に言われています。

 政党助成法・政治資金規正法・公職選挙法等の政党関連法がありますからね。

 そういう中で、判例(最大判昭45.6.24:いわゆる八幡製鉄政治献金事件判決)も、政党の憲法上の意義について、

「憲法の定める議会制民主主義は政党を無視しては到底その円滑な運用を期待することはできないのであるから、」

「憲法は、政党の存在を当然に予定しているものというべきであり、」

「政党は議会制民主主義を支える不可欠の要素であり、そして同時に、政党は国民の政治意思を形成する最も有力な媒体であると解する。」

と判示するにいたっています。

 ここまで来ると、原始的三権分立思想も、形式的なものとなり、

議会と政府との対抗関係から、

政府与党と野党との対抗関係へと

変遷していくわけですが、この現象を「政党国家現象」と通常呼んでいるわけです。

 現実の政治をとらえるには、形式的な憲法条文から見るのではなくて、

実質的なこの「政党国家現象」から見た方がわかりやすいのかもしれませんね。

 議会(国会)・政府(内閣)の対抗関係ではなくて、与党・野党の対抗関係から、権力分立を見るという見方です。

 そうすると、現実の政治の流れも見やすくなるものだと思います。

(というか、憲法の条文を知らずに現実だけ見ていれば、すぐにわかることでもありますが・・。)

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 そして、このように実社会の実態に合わせて、憲法解釈も変わってくるということになります。

 つまり、政党国家現象的なものを前提に憲法を解釈していくとかそういうことになってくるわけですね。

 憲法のどこにも「政党」なんて書いていないのに、判例が、

「憲法は、政党の存在を当然に予定している」

 とまで言い切ってしまうのにはそういう理由があるものだと思われます。

 こうして、憲法も形式的条文的世界から飛躍し、解釈を媒介として、新たな姿を現すということになります。

 ですので、条文をじっと見ていているだけでは、憲法の中身は見えてこず、

また「判例」もよくわからない意味不明なことをいっているように見えてしまうということにもなるわけです。

 様々な背景をもった解釈を理解してはじめて、

法律というものの後姿がようやく見えてくるものであり、

条文だけ眺めているだけでは、実は法律の何も見えていないということになるのではないかとも思います・・。

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 今回のタイトル、非常に失礼なタイトルにしてしまって、申し訳ありません・・。<(*_ _)>

 はい、お見込みの通りです。

 注意(attention)を引くためにあえてこういうタイトルにさせていただきました・・。

 インターネットではこういう手法が流行っているようなので、少しやってみたかったんです・・。

 ご気分を害されたならお許しくださいませ・・。(;_;)

 さて、これまで、このブログでは憲法(人権編)を中心に取り上げてきました。

 行政書士試験対策としては十二分な内容の提供ができたのではないかと思います。

 よくご理解いただいた方はこの分野に関する本番の問題を前にして、余裕を持って挑めるのではないかと存じます。

 そういうことで、憲法人権編は一応、一段落したので、次のテーマを検討中です。

 今回は、久しぶりに軽い話題として、試験委員対策について考えてみたいと思います。

 試験委員対策は必要ないという方もおられますが、しかしながら、昨年度出題された以下の問題を見てみましょう。

 (平成18年度行政書士試験問題8より以下引用)

問題8 公法と私法が交錯する領域に係る次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1 防火地域に関する建築基準法の規定は、民法の相隣規定に関する特別法として適用されるとするのが最高裁の判例である。
2 現実に開設されている私道を日常的に利用する利益は反射的利益であり、敷地所有者に対して通行妨害排除の民事訴訟を提起する利益とはなりえないとするのが最高裁の判例である。
3 建築確認は、その土地について私法上の権原がある者により申請される必要があるから、権原なき者によって申請された場合には、そのことを理由として却下することができるというのが最高裁の判例である。
4 公営住宅に世帯主として入居している者が死亡した場合、その相続人が低所得者であるときには、入居関係は相続させなければならないとするのが最高裁の判例である。
5 海岸線の変動により、従来私人の所有であった土地が海面下に沈んだ場合には、私人の土地所有権は自動的に滅失するというのが最高裁の判例である。
(引用終わり)

 今回は、問題解説がテーマではありませんので、この問題の解説は行ないませんが、

この問題、新任試験委員のカラーがモロに出ている問題です。

 恐らく出題にかかわったのは、昨年度から着任された以下の委員ではないかと推測されます。

 ココをクリックしてください。秋山靖浩試験委員に関するページ 

 この問題8は、一応行政法の問題とはなっていますが、内容的には、秋山委員の専門分野であり、

民法の学際テーマである相隣法、相隣関係、地役権、都市計画、建築法規等に関する問題となっています。

 選択肢1などは、 相隣法における代表的な論点であり、相隣法を専門にしている研究者ならついつい出したくなるテーマだと思います。

   問題8は、「公法と私法が交錯する領域に係る」内容に関するものですが、

秋山委員は、

日本法社会学会学術大会全体シンポジウムで、

「民法学における私法・公法の<協働>――その現状と課題――」というテーマでの発表も行なっているようですね。

 行政書士試験は、国家試験であり、出題する方としても、失敗は絶対に許されないものであって、作問作業は、非常に緊張感のある仕事だと思います。

 ある意味、試験委員も命がけで仕事をしています。

 新司法試験では、作問ミスではありませんが、試験委員が不適切な試験対策答案練習会での指導を行なったということで、

当該委員は、大学院教授の職を辞し、それでも収まらず、全国の弁護士等が当該委員を国家公務員法違反で告発するという騒ぎまでになっています。

 恐らく当該委員もそんなに悪気はなかったものだと思うのですが

(ですので、私見的には少しかわいそうな気もしないでもないですが・・。)

ほんの少しのミスがこのような事態を招き、まさに命取りになってしまいます。

 そういう意味で試験委員の仕事は命がけであるということです。

 出題ミスは許されないわけですから、どうしても、委員の得意中の得意分野を出題したくなるというのは心理的にしかたないことではないかと思います。

 学者の専門分野は非常に狭い領域であり、例えば民法学者といえども、必ずしも民法全般に精通しているとは限らないので、

専門分野以外のあまりよく精通していない分野の内容を無理して出題するとミスが生じるおそれがあります。

 条文を単純に問う問題ならばそうそうミスも生じないとは思いますが、

法的思考力を問う形に変貌した新行政書士試験においては、そういう単純な問題ばかりを出題することはできません。

(そんな単純な問題ばかりの出題でいいならば、

法科大学院教授等を試験委員として多数並べる必要もなく、

六法を渡せば誰でも作問できるわけですから、中学生を試験委員にしてもいいんですね。極端な話・・。)

 そういうことで、複雑な問題を出題しなければならないわけですが、問題文を長文化し、内容を複雑にすればするほど、比例的に出題する側にミスが生ずる可能性が高まります。

 よって、リスクを避けるために勢い自分が得意な分野を出題してしまうということはよくあることではないかと思います。

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 だからといって、各試験委員の専門分野をツブさに潰すということは不可能かと思いますし、そこまでする必要はないものだと思います。

 全てが難しくて複雑な問題ではありませんから。

 では、試験委員情報を何に使うのかというと、それは、基本をしっかりと学習し、

一通り試験範囲の勉強した後の、本試験の難問ヤマ当てに使えばよいのではないかと思います。

 例えば、秋山委員と同様に、昨年から着任された林知更試験委員(憲法)の専門分野は、「政党」です。

 となると、「政党」に関する憲法判例、

例えば、「最大判昭45.6.24」、いわゆる八幡製鉄政治献金事件判決に関する出題がされるのではないかという予測が立つわけです。

(この判例は、「憲法は、政党の存在を当然に予定している」と解したものです。)

 あるいは、政治資金に対する規制はやむを得ないものであるとする通説の見解や、

この分野(政党)ではよく知られている、

政党と国家との関係は一般に、敵視状態から始まり、無視、承認・法制化、憲法編入という段階に進んでいくという考え方(トリーペルの発展図式)、

 ドイツ基本法(憲法)21条2項で、

「政党の目的または当該政党構成員の行動が自由かつ民主的な基本秩序を侵害もしくは除去し、

または、ドイツ連邦共和国の存立を危くすることを目的とするものは、違憲である。

連邦憲法裁判所が違憲の問題に関する最終的な判断を行なう。」

 と規定されている「戦う民主主義思想」は、日本においては否定的にとらえられているということ、

 議会と政府との対抗関係から政府与党と野党との対抗関係へと権力闘争のあり方が変遷しているという考え方である、

「政党国家現象」などが、出題されるのではないかという予測が立つということになります。

 このような形で試験委員情報は、多勢が間違える難問のヤマ当てに利用できるということになります。

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 例えば、「政党国家現象」等に関する問題が仮に出題された場合、受験生はお手上げ状態となり、得点できない人が多いことでしょう。

「多勢ができない問題は解けなくてもいい。」とアドバイスする方もおられますが、

合否ライン上に数千人が並んで、一点差で、合格・不合格が分かれる行政書士試験においては

(これは平成14年度試験の結果を見ればわかるかと思います。1問ボツ問があっただけで合格率が跳ね上がったわけですから、当落線上に非常に多くの方がひしめいているということになります。)

誰もが得点する問題はミスなく得点し、その上で多勢ができない難問を何問か得点できることが合格の必須条件となります。

 基礎力をしっかりと身につければ、合格まであと一歩のところまでは得点できます。

 しかし、合格に必要なのは、その先のあと1問です。

 しかしながら、合格に必要なそのあと1問が、いじわるなことにとても難問の出題になっています。

 誰しもが得点できる問題だけを得点していても合格は難しく、そのことは約5%という合格率に如実に現れています。

 合格するための最後のあと1点を得点する上で、試験委員情報に基づくヤマ当ては非常に役立つものと思われます。

 では、どうやれば試験委員情報を手に入れられるかということですが、インターネットを使えば容易に入手することが可能です。

 まず、試験委員名簿は以下にあります。

 試験委員名簿はココクリックしてください。


 次に、各試験委員の名前をグーグル等で検索すれば、各自の専門分野等がわかるページを見つけることができると思います。

 全てを検討する必要はありませんが、気になる試験委員の気になる専門分野については、これもインターネットを使えば容易に検索できます。

 例えば先の林知更試験委員の場合ですと、専門分野は「政党」。

 そこで、「政党」「憲法」「判例」をキーワードにグーグルで検索してみると、この分野に関する様々な情報を得ることができます。

 前述した「八幡製鉄政治献金事件判決」なども出てきますね。

 当該判例の内容を詳しく知りたい場合は、判例検索システムを使います。


 こうすると、出題される可能性の高い、判例も絞れるということになるわけです。

 「政党」「憲法」「学説」をキーワードにグーグルで検索してみると、これまた前述した、「トリーペルの発展図式」等が出てきますね。

 また、インターネットを使わないオフライン的なリサーチとして、学者が書いた憲法基本書の「政党」に関する部分の記述

(その部分のみを読むために買うのがもったいないというのであれば、図書館で読むという形でもよいことでしょう。)

を読むということも有効かと思います。

 こういう手順で試験委員情報を活用すると、精度の高い問題予想が行え、

ズバリ当てることができる難問のヤマ当てが可能となって、多勢が得点できない問題を得点することもでき、

(競争試験ではないのですが、合格ボーダー1点下に数千人がひしめき合うということは、

その1点が得点できるか否かが合否の分かれ目になっているということです。)

受験上非常に有利になります。

 繰り返しになりますが、この試験委員対策は、何問か出題される難問を全て得点するためのものではありません。

 合格するために必要なあと、数問を得点するためのものです。

 ですので、やりすぎは禁物だと思います。

 気になる試験委員、気になるテーマに絞って行なうと、効果が期待できるのではないかと思います。

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民法正誤問題(相続)

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  さてメルマガ28号では相続を取り上げました。

 メルマガ28号を読み終わった方は、合わせて以下の問題を解いてみると、知識の定着を図れるものと思います。

(民法正誤問題)

 以下の記述は、民法の規定及び判例に照らして妥当か否か。

(平成16年国家公務員2種試験民法科目より以下引用)


「Aが死亡し、Aが所有していた不動産をB、Cが共同相続したが、Cが相続放棄した後に、Cの持分に対して債権者Dが差し押さえた場合、Bは自己の所有権を登記なくしてDに対抗できない。」

(引用終わり)

(民法正誤問題終わり)

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正解は以下です。

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正解は以下です。

正解:妥当ではない。

 最高裁判例(最判昭42.1.20)は、

「相続人は、相続の放棄をした場合には相続開始時にさかのぼつて相続開始がなかつたと同じ地位に立ち、

当該相続放棄の効力は、登記等の有無を問わず、

何人に対してもその効力を生ずべきものと解すべきであつて、

相続の放棄をした相続人の債権者が、相続の放棄後に、相続財産たる未登記の不動産について、

右相続人も共同相続したものとして、代位による所有権保存登記をしたうえ、

持分に対する仮差押登記を経由しても、その仮差押登記は無効である。」

と判示しています。

 判例に照らすと、相続放棄の効力は絶対であり、本問におけるBも登記等なくしてDに対抗できるので、これと反する記述になっている本問は妥当ではありません。

 より、詳しい解説は以下の当メルマガバックナンバーでご確認のほど宜しくお願いします。

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憲法正誤問題(参政権等)

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 今回は前回の内容を正誤問題で確認してみたいと思います。

(憲法正誤問題)
 
以下の記述は、妥当か否か。

(平成13年度国家公務員試験憲法科目より以下引用)
1.

「国民は、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負っているから、法律の定める免除事由によらず普通教育を終えていない者は選挙権を有しないとする法律を制定しても、憲法に違反しないと解するのが通説である。」

2.

「選挙に関する犯罪により一定以上の刑に処せられた者に対して、選挙権を所定の期間停止することは憲法に違反するが、被選挙権については所定の期間停止することとしても憲法に違反しないとするのが判例である。」

(引用終わり)

以下の記述は、判例に照らして妥当か否か。

(平成13年度国税専門官試験憲法科目より以下引用)

3.
「宗教上の信念に基づき輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有している患者に対し、医師が、手術の際に輸血以外には救命手段がない事態が生じた場合には輸血を行なうとの方針を採っていながら、当該方針を事前に患者に説明することなく手術を行なうことは、このような手術を受けるか否かについて患者が意思決定をする権利を奪うものであり、人格権の侵害に当たる。」

(引用終わり)

(憲法正誤問題終わり)

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正解は以下です。

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正解は以下です。

解答


1. 妥当ではない。

 憲法15条2項で保障される普通選挙は、狭義では、「財力によって選挙権を与える与えないというような差別をしない選挙」という意味ですが、

広義では、財力だけではなく、教育・性別なども選挙権の要件とはしてはならないという意味になり、

現在、普通選挙を広義でとらえるのが通説的立場です。

 とすると教育は選挙権の要件とはならないわけですから、普通教育を終えていない者は選挙権を有しないとする法律は違憲となると解するのが妥当ということになります。

 問題文はこれに相反する記述となっているので妥当ではありません。

2. 妥当ではない。
 
 選挙権であれ、被選挙権であれ、選挙には公務としての性格があるがゆえに、公職選挙法上の受刑者や選挙犯罪の処刑者に対する当該権利の制約も許されると解されます(判例(最判30.2.9)も同旨)。
 
 判例(最判30.2.9)は、


「国民主権を宣言する憲法の下において、公職の選挙権が国民の最も重要な基本的権利の一であり、

それだけに選挙の公正はあくまでも厳粛に保持されなければならないのであつて、

一旦この公正を阻害し、選挙に関与せしめることが不適当とみとめられるものは、

しばらく、被選挙権、選挙権の行使から遠ざけて選挙の公正を確保すると共に、

本人の反省を促すことは相当であるからこれを以て不当に国民の参政権を奪うものというべきではない。」

と述べ、

選挙犯罪の処刑者に対し、被選挙権・選挙権を制限しても違憲とはならないと判示しています。

3.妥当である。

 判例(最判平12.2.29)の判示に基づく記述であり、妥当です。

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参政権

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 憲法15条は以下のように規定しています。

「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。


2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。

3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。

4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。」

 ここに規定されている権利を通常「参政権」といいます。

 主権者たる国民は政治に参加する権利(参政権)を持ちます。

 具体的には、議会議員の選挙権、被選挙権、国民投票権、公務員就任権(広義的参政権)等です。

 ただし、国民投票権については直接には、憲法96条・95条に規定があり、

 また、公務員就任権については、憲法15条1項を根拠とする説だけでなく、

憲法14条

(すべて国民は、法の下に平等であつて、〔中略〕政治的〔中略〕関係において、差別されない。)

に根拠が求められるべきものであるとか、

職業選択の自由(憲法22条1項)によるものであるとか、

憲法13条

(幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。)

を根拠とするものだとする説もあります。

 参政権の中心となるのは、選挙権です。

 しかし、この選挙権を巡っては、これは「権利」であるのか、はたまた権利というよりは「公務」ではないかという点で考え方が分かれます。

 多数説は、まぎれもなく権利ではあるが、公務としての性格もあるという立場(ニ元説)にあります。

 公務としての性格があるがゆえに、公職選挙法上の受刑者や選挙犯罪人に対する選挙権の制約も許されると解されます(判例(最判30.2.9)も同旨)。

 15条1項については、「公務員を選定し、及びこれを罷免」とあるが、じゃあ国民は国会議員を罷免できるか否かという論点もあります。

 これについては、まず憲法が、国会議員が失職する場合に関し詳細な規定(45条・55条・58条2項・69条)を置いており、

またここには国民が国会議員を罷免できるという旨の規定はないこと、

51条は、「両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。」と規定しており、

これは、国民による国会議員の罷免を否定する意味合いもある解されること、

憲法前文1項に「権力は国民の代表者がこれを行使し」とあることから、

憲法は直接民主制ではなく代表民主制を採用していると解することができること等の理由により、

国民は国会議員を罷免できないとする説(否定説)が通説となっています。

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 15条2項

(公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。)

については、「普通選挙」とは何ぞやという点が論点となります。

 普通選挙は狭義では、「財力によって選挙権を与える与えないというような差別をしない選挙」という意味ですが、

広義では、財力だけではなく、教育・性別なども選挙権の要件とはしてはならないという意味になります。

普通選挙を広義でとらえるのが通常の考え方だと思います。

 なお、憲法44条は、

「両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。」

と規定し、選挙権のみならず、被選挙権に関する資格平等の原則も定めています。

 なお、被選挙権について判例(最大判昭43.12.4)は、

「公職の選挙に立候補する自由は、憲法第15条第1項の保障する重要な基本的人権の一つと解すべきである。」

としてその権利性を認めています。

 普通選挙と似た概念に平等選挙原則があります。

 これは、選挙権の価値の平等を意味しています。

 つまり、一人一票の原則です。

 金持ちには2票あげる(複数選挙)とか、

金持ちは金持ちで選挙し、金持ち代表を選び、

そうでない方々は、そうでない方々代表を選ぶというような選挙(等級選挙)はダメですよということです。

 つまり、平等選挙でいう平等とは、「数的平等」を表します。

 ただし、現在は単なる数的平等だけではなく、投票の価値的平等も、平等選挙でいう「平等」に含まれると解する立場が判例(最大判51.4.14)・通説になっています。

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 15条4項は、

「すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。」

と規定しています。

 誰に投票したのかわからなくする制度を「秘密選挙(秘密投票)」といいます。

 15条4項はこれに関し規定しています。公共の福祉による制約についての規定がないので、秘密選挙については公共の福祉による制限も許されないと解されます。

 秘密選挙を保障しなければ、

「お前、あれだけ○○に入れてくれとお願いしたのに、△△に入れやがって!もう、お前の会社とは取引しないからな。」

というようなことがあちらこちらで発生して、

そして、それによって嫌な思いをするのは決まって弱者ですから、

秘密選挙は、社会的弱者保護のための規定であると解してよいことでしょう。

 諸外国でも広く採用されているものです。

 近代選挙法の基本原則としては、他に自由選挙、直接選挙の原則があります。

 自由選挙とは、選挙権を理由なく行使しなくても、罰金を科せられたり、

「こいつは選挙に行きませんでした!大切な公務を怠りました!」

みたいな感じで、氏名公表をされることはないという制度のことをいいます。

 学説には、選挙には公務性もあるのだから、

理由なくして選挙を棄権するようなヤツには、制裁を与える「強制選挙」制度も認められるとする説もありますが、

これを否定する説が多数説となっています。

 「強制選挙」のように、そこまで強権的なことをされるのはまっぴらごめんだと思う人が多いでしょうし、

こういうものはしっかりとした公民教育をやれば、

選挙棄権率は下がるものですから、

そういう方法で対処する方がベターだからですね。

 選挙権の公務性を考慮からはずして、権利として見た場合でも、

投票はあくまでも個々の国民の自由意志によるべきものでもあり、

「大切な権利なんだから、行使しなさい!しないと酷い目に合わすわよ〜。」

などと、ドSチックに、押しつけがましくやるのもいかがなものかとも思います。

 上記の例などは思いやり・人助けをしたいというよりも、優秀な自分が他人を支配したいという欲求が強いだけと思われます。

 余計なお節介、つまりよかれと思ってやる押し付けがましい一見倫理的に見える行為も憲法価値観からすると、相容れないものではないかと考えます。

 憲法13条上の幸福追求権の一内容として

「一定範囲の私的事柄につき、公権力から干渉されることなく自ら決定する権利」、

つまり自己決定権があるとするのが通説的な立場です。

 ライフ・スタイルは自分で決められるということです。

 家族のあり方や自身の人生のあり方、服装や髪型等につき、ヤイヤイ言われる筋合いはないというのは憲法上の権利でもあると解しているわけですね。

(ただし、髪型や服装については、自己決定権の保障範囲を人格的生存に不可欠なものに制限するする考え方、

つまり、「人格的利益説」によれば憲法上の保護は及ばないという結論になる可能性があります。

自己決定権は個人の自由な活動を幅広く保障するとする「一般的自由説」によれば、

髪型や服装も自己決定権の保障範囲となることでしょう。

上記は一般的自由説に基づき、記述しています。)
 
 髪型やら服装のようなことだけではなく、自分のことは例え、生き死に関することであっても、自分で決めさせろということです。

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 判例(最判平12.2.29)も、

「患者が、輸血を受けることは自己の宗教上の信念に反するとして、輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有している場合、このような意思決定をする権利は、人格権の一内容として尊重されなければならない。」

として、

 「医師が、患者が宗教上の信念からいかなる場合にも輸血を受けることは拒否するとの固い意思を有し、

輸血を伴わないで肝臓のしゅようを摘出する手術を受けることができるものと期待して入院したことを知っており、

右手術の際に輸血を必要とする事態が生ずる可能性があることを認識したにもかかわらず、

ほかに救命手段がない事態に至った場合には輸血するとの方針を採っていることを説明しないで右手術を施行し、

患者に輸血をしたなど判示の事実関係の下においては、右医師は、

患者が右手術を受けるか否かについて意思決定をする権利を奪われたことによって被った精神的苦痛を慰謝すべく不法行為に基づく損害賠償責任を負う。」

としています。

 まあ、最高裁判例ははっきりと自己決定権を認めたものではないと解される場合が多いのですが、それに基づくと思われる損害賠償請求権は少なくとも認めています。

 また、高裁判決(東京高判10.2.9)は、

「自己の人生のあり方は自らが決定できるという自己決定権を各個人は有する。」というような判示をし、「自己決定権」という言葉を用いています。

 このような自己決定権の対極にあるのが、本人のためを思ってというような理由付けにより行われる自由の制限である「パターナリスティックな制約」で、

日本にはこのようなパターナリズム的な制約が社会のあらゆる面で多く見受けられるものと思われます。

 パターナリスティックな制約は、自分が相手より優位な立場にあることをいいことに余計なおせっかいを行なうようなことみたいなもので、

ひとつ間違えばパワー・ハラスメントとなるパワハラと紙一重のものです。

 このような日本における「パターナリスティックな制約」の多さが、

「自己決定権」議論の必要さを際立たせるものではあるのですが、

ただ、未成年者については、未熟なゆえに自己の未来の選択肢を狭めるような可能性が高い事柄については一定の「パターナリスティックな制約」を認めるべきであるとする意見もあります。

 しかし、人権を制約できるのは基本的には人権同士が衝突した場合、

つまり他者加害がある場合(公共の福祉による制約)に限られるべきであり、

自己加害があるからといって、優越的地位を利用して親代わりになって保護するつもりで行なわれるような人権制約、すなわち、パターナリスティックな制約などは本来認められるべきものではありません。

 パターナリスティックな制約を安易に認めると、これを理由に、過剰な人権制約が行なわれがちになることは目に見えており、

国家の介入をできるだけ阻止するということがメインテーマである憲法の発想から大きく乖離することになるからです。

 したがって、パターナリスティックな制約を仮に認めるとしても、これを認めなければ、本人の人格的自律性の回復が不可能なほどに永続的に自己加害が行なわれるという極めて限定された場面にしか許されないと解されます。

 自己決定権の方にいってしまったので、長くなりましたが、今回のテーマの最後は、近代選挙原則の最後の原則、「直接選挙」です。

 これは、間接選挙や複選制に対するもので、文字通り選挙人が直接に公務員を選挙するという制度です。

 複選制(準間接選挙制)とは、例えば地方議会議員だけで、国会議員選挙をするというようなものです。
 
 つまり、住民が選んだ、地方議会議員が国会議員を選挙していますから、間接的には住民が国会議員を選んでいます。

 その意味で、準間接選挙と呼ばれる場合もあります。

 一方、間接選挙とは、国民がまず、選挙委員を選びます。

 ついで、この選挙委員が公務員を選ぶというもので、アメリカ大統領選挙などで採用されています。

 選挙委員は選挙が終わればその役目も終わって職が解かれますが、

この点(上記の例上の地方議会議員は選挙が終わっても職は解かれません。)が複選制との違いということになります。

 憲法43条1項(両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。)上の選挙には、

「間接選挙」が含まれると通常解されていますが、複選制は間接性が強すぎるので、ここでいう選挙には含まれないとするのが通説的な見解です。

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憲法正誤問題(受益権)

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 今回は前回の内容を正誤問題で確認してみたいと思います。

(憲法正誤問題)
 
以下の記述は、判例に照らして妥当か否か。

(平成15年度裁判所事務官試験憲法科目より以下引用)


1.
「憲法第32条でいう「裁判」とは、公開・対審の訴訟手続による裁判を指すと解されており、当事者間の権利義務に関する紛争を前提としないいわゆる非訟事件についても、公開・対審の手続が必要であるとするのが判例である。」

(引用終わり)

(平成14年度特別区公務員試験憲法科目より以下引用)

2.
「国又は公共団体は、公権力の行使にあたる公務員の職務行為に基づく損害について、公務員の故意又は過失による責任を前提に、当該公務員に代位して賠償責任を負う。」

(引用終わり)

(平成13年度国税専門官試験憲法科目より以下引用)

3.
「憲法第40条は、犯罪の嫌疑を受け、抑留又は拘禁されたことに伴う被害に対し、衡平の観点から金銭によって事後的に救済する趣旨に出たものであるから、同条にいう無罪の裁判には、刑事訴訟法上の裁判による無罪の確定判決のみならず、少年審判手続における非行事実のないことを理由とした不処分決定も含まれる。」

(引用終わり)

(憲法正誤問題終わり)

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正解は以下です。

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正解は以下です。

正解:
1. 妥当ではない。


 判例(最大決昭32.7.6)は、32条でいう裁判を、

82条でいう裁判と同じものであると解し、

当事者間の権利義務に関する紛争を前提とし、

当事者の主張する権利義務の存否を当事者の意思いかんにかかわらず、

終局的に事実を確定し、確認するものである

とし、非公開で行なわれる非訟事件処理は、32条上の裁判にはあたらないとしています。

2. 妥当である。


 国家賠償責任をどう解するについては、公務員の故意・過失に基づく責任を前提として、

それを国家が代位するものとする「代位責任説」が判例通説の立場となっています。

3. 妥当ではない。


 判例(最決平3.3.29)は、

「刑事補償法1条1項にいう「無罪の裁判」とは、刑訴法上の手続における無罪の確定裁判をいうところ、

不処分決定は、刑訴法上の手続とは性質を異にする少年審判の手続における決定である上、

当該決定を経た事件について、刑事訴追をし、又は家庭裁判所の審判に付することを妨げる効力を有しないから、

非行事実が認められないことを理由とするものであっても、刑事補償法1条1項にいう「無罪の裁判」には当たらないと解すべきであり、

このように解しても憲法40条及び14条に違反しない。」

としています。

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「第7回全国研修会」

2007年10月13日・14日開催

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受益権

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 請願権(憲法16条)、裁判を受ける権利(憲法32条)、国家賠償請求権(憲法17条)、刑事補償請求権(憲法40条)を合わせて受益権(国務請求権)といいます。

 これらは、権利・自由が侵害された場合に、国民が国家に対して積極的作為を要求し、救済を求めることができる権利であるとされています。

 国家に対して一定の作為を求めることができるとする点で、社会権とよく似ていますが、社会権は社会国家的思想に基づく、比較的新しい権利であるのに対して、

受益権は、国民の権利・自由を実質的に確保する権利であり、自由国家的思想に基づくもので、比較的古いタイプの権利であるという点に違いがあると一般にいわれています。

 憲法16条は以下のように規定しています。

「何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。」

 ここで規定されている権利を「請願権」と呼んでいます。

 ようするに、国家に対して要望を述べる権利ですが、

請願を受ける方には、受理する義務はあるが、その要望を必ず実現しなければならないわけでも、

調査・審理・判定・報告等までを必ずしなければならない義務があるわけでもないと考えるのが通説的見解になっています。

 また、国家に対する要望は、表現の自由による主張や選挙により、国家に対する救済は、行政不服申立や裁判によって実現可能であることから、

請願権の意義は現在においてはあまり重要ではなくなってきているともされています。

 一方で、表現の自由による主張や選挙等では拾いきれない民意があり、それを埋めるために、請願権には重要な意義がある(これを請願権の参政権的機能といったりします。)とする考えもあります。

 また、請願権は何人も有するとされており、法人やその他の団体、未成年者、外国人にも保障されると解されるところ、

原則的に参政権がないこれらの者にとっては、国家に対し、要望をすることができるとしている請願権は重要な意義があるとされています。

 ただし、暴力等の威嚇的方法にて請願する権利までは認められておらず(条文に平穏にとあるので)、これらの方法で請願した場合は、適正な請願権行使とは認められないということになります。

 時代劇なんかを見ていると、代官に

「お代官様、わしらのいうことを聞いてけろ!」

と人々が請願しているシーンがよくありますが、

その後、決まって、代官に「何を!切捨て御免だ!」とかいわれてあえなく、バッサリやられてしまいますね。

 まあ、そこまでのことは現代ではないとは思うのですが、請願したがために、嫌がらせを受けるという可能性はなきにしもあらずです。

 こういうことを防ぐために、憲法16条は、わざわざ「何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。」ということも規定しています。

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 憲法32条は、「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」と規定しています。

 これは、裁判を受ける権利を保障しているわけですが、今では当たり前に思えるこの権利も当たり前になったのは最近のことです。

 昔は、刑事裁判すらもせずに、捕まっていきなり処刑とかいうこともよくあったわけですね。

 もちろん、これでは国民はたまったものではありませんので、近代においては、重要な権利として「裁判を受ける権利」が憲法において保障されるに至ったということになります。

 受ける権利というと、「裁判を受けさせろ!」と作為を求めるつまり、受益権的性格が強いわけですが、

一方で、「刑事裁判をせずして、刑罰を科すな!」という自由権的側面もこの権利にはあり、

いわゆる「複合的権利」的な権利であるともいえます。

 32条が保障するものは、上記のような刑事裁判において被告人が公正な裁判を受ける権利だけではなく、

民事事件や行政事件について訴訟を提起できる権利も含まれています。

 また、裁判所は、国民が裁判を求めてきた場合にそれを拒否できないということも32条の趣旨ですが、この部分は「裁判拒絶禁止」と呼ばれています。

 だからといって、不適法な訴えまで、拒絶できないというわけではなく、適切でない訴えについては、却下したり拒否することは可能と解されています。

 32条で規定されている裁判とは、

憲法82条1項(裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。)

でいう裁判と同義であると解されるところ、

とすると、対審及び判決は公開法廷で行なわれなければならないということになります。

 となると、一般に非公開で行なわれる非訟事件

(民事関連事件に関し、通常の裁判とは異なる簡易な手続で処理がなされる事件類型:後見開始審判・失踪宣告・遺産分割等)

の裁判は、32条でいう裁判なのかどうかということが問題となります。

 この点については、32条は原則論をいっており、非訟事件処理のような一種の後見的行政サービス的なものについては、例外として公開としないこともでき、

非訟事件処理もやはり、32条でいう裁判であるとする「肯定説(通説)」と、

あくまでも32条でいう裁判とは82条1項でいう公開裁判であり、

非公開で行なわれる非訟事件処理は、32条上の裁判にはあたらないとする「否定説(判例:最大決昭32.7.6)」に考え方がわかれています。

 否定説は、32条上の裁判を、

純然たる訴訟事件につき

1.当事者の主張する、権利義務の存否を、

2.当事者の意思いかんにかかわらず、終局的に

3.事実を確定し、確認する裁判である。

として、このようなものは82条の公開裁判によるものとしています。

 しかし、非訟事件については、権利義務の存否を確定しない、

あるいは、

それを審理することはあっても、終局的判断をするわけではなく、別途当該存否を訴訟で争う方法がある場合には、

公開裁判による必要はなく、これらをどのような方法で裁判しようとも32・82条の問題は生じないとしたりしています。

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 憲法17条は以下のように規定しています。

「何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。」

 これが、国家賠償請求権に関する規定です。

 これについても、プログラム規定か抽象的権利か、それとも具体的権利かで争いがあるわけですが、抽象的権利であるとする抽象的権利説が多数説となっています。

 しかし、具体的立法として「国家賠償法」が実際に制定されていることから、最近はこの点につき議論されることは少なくなっています。

 また、国家賠償責任をどう解するについては、

公務員の故意・過失に基づく責任を前提として、

それを国家が代位するものとする

「代位責任説」が判例通説の立場となっています。

 ただ、この考え方だと、過失の認定が難しいものについては、被害者が救済されないのではないかという問題が発生するわけですが、

これについては、裁判実務上過失を緩やかに認定するという方法で対処しています。

 17条上の問題として、もうひとつ、国会等の立法行為や立法不作為が「公権力の行使」にあたるか否かが論点となりますが、判例は17条上の問題を生じせしめないとしています。

 

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 憲法40条は以下のように規定しています。

「何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。」

 ここで規定されている権利を「刑事補償請求権」といいます。

 無罪になったということは、そもそも、抑留・拘禁される、いわれはなかったわけです。

 間違いであろうがなんであろうが、一旦逮捕等をされて抑留等されると、

逮捕されただけで犯人確定したかのような扱いがされる日本社会の風潮からすると、

あとで無罪判決を受けても、推し量ることのできないダメージを受けてしまいます。

 そこで、正当に抑留等がなされた場合であっても、無罪の裁判を受けた場合は、

国民は国家に対して被った損失の補償を請求できるとしたのが、この条文でこれを受けて「刑事補償法」が制定されています。

 40条で問題となるのが、不起訴となった場合にも、刑事補償請求権を認めるか否かです。

 一般に不起訴は無罪の裁判を受けたわけではないわけですから、刑事補償は必要ないと考えられています。

 ただ、判例(最大決昭31.12.24)は、この点につき、

「憲法第40条にいう「抑留又は拘禁」中には、たとえ不起訴になった事実に基く抑留または拘禁であっても、

そのうちに実質上は、無罪となった事実の取調のための抑留または拘禁であると認められるものがあるときは、

その部分の抑留および拘禁もまたこれを包含するものと解するを相当とし、

刑事補償法第1条第1項の「未決の抑留又は拘禁」とは右憲法第40条の「抑留又は拘禁」と同一意義のものと解すべきである。」

としています。

 なお、上記中の刑事補償法1条1項は以下のように規定しています。

「刑事訴訟法による通常手続又は再審若しくは非常上告の手続において

無罪の裁判を受けた者が同法、少年法又は経済調査庁法によつて

未決の抑留又は拘禁を受けた場合には、

その者は、国に対して、抑留又は拘禁による補償を請求することができる。」

 この規定に関連する事項につき、判例(最決平3.3.29)は、

「刑事補償法1条1項にいう「無罪の裁判」とは、

同項及び関係の諸規定から明らかなとおり、

刑訴法上の手続における無罪の確定裁判をいうところ、

不処分決定は、刑訴法上の手続とは性質を異にする少年審判の手続における決定である上、

右決定を経た事件について、刑事訴追をし、又は家庭裁判所の審判に付することを妨げる効力を有しないから、

非行事実が認められないことを理由とするものであっても、

刑事補償法1条1項にいう「無罪の裁判」には当たらないと解すべきであり、

このように解しても憲法40条及び14条に違反しない。」

と判示しています。

 なお、抑留・拘禁が、公務員の故意・過失による場合は、刑事補償請求権と国家賠償請求権の2つの権利にて損失補償ないし損害賠償が行なえるものと考えられますが、

この点につき刑事補償法5条は、

「この法律は、補償を受けるべき者が国家賠償法その他の法律の定めるところにより損害賠償を請求することを妨げない。

 補償を受けるべき者が同一の原因について他の法律によつて損害賠償を受けた場合において、
 
その損害賠償の額がこの法律によつて受けるべき補償金の額に等しいか、又はこれを越える場合には、補償をしない。
 
その損害賠償の額がこの法律によつて受けるべき補償金の額より少いときは、損害賠償の額を差し引いて補償金の額を定めなければならない。
 
 他の法律によつて損害賠償を受けるべき者が同一の原因についてこの法律によつて補償を受けた場合には、その補償金の額を差し引いて損害賠償の額を定めなければならない。」
 
と規定しており、いずれか一方で補償ないし賠償を受け、足らない場合は、他方で補償なしい賠償を受けることができるとしています。
 
 
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 今回は前回までの内容を正誤問題で確認してみたいと思います。

(憲法正誤問題)
 
以下の記述は、判例に照らして妥当か否か。

(平成15年度国家公務員2種試験憲法科目より以下引用)


1.
「憲法第31条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関する規定であるが、行政手続についても、刑事手続と同様に本条の保障の枠内にあり、行政処分によってその相手方の権利を侵害するおそれがある場合には、当該処分により達成しようとする公益の内容・程度を問わず、当該処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与える必要がある。」

(引用終わり)

(平成11年度国家公務員2種試験憲法科目より以下引用)

2.
「憲法第37条第2項により、被告人はすべての証人に対して審問をする機会を十分に与えられることが保障されているから、裁判所は被告人申請の証人をすべて喚問しなければならない。」

3.
「憲法37条第2項により、被告人は、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有しており、有罪判決においても証人喚問に要した費用を被告人に負担させてはならない。」

4.
「憲法第38条第1項の趣旨は、何人も自己が刑事責任を問われるおそれのある事項について供述を強要されないことを保障したものであるから、自己の氏名は、原則として不利益な事項に該当しない。」

(引用終わり)

(平成9年度国家公務員1種試験憲法科目より以下引用)

5.
「憲法第39条の一事不再理の原則は、何人も同じ犯行について2度以上罪の有無に関する危険にさらされるべきではないという根本思想に基づくものであるが、下級審の無罪判決に対し検察官が有罪判決を求めて上訴することは、被告人を二重の危険にさらすものではなく、憲法第39条に違反しない。」

(引用終わり)

(平成13年度労働基準監督官試験憲法科目より以下引用)

6.
「憲法第33条の令状主義の趣旨は、捜査権力が逮捕権を濫用し不当な逮捕を行なうことを抑制しようとするものであることから、本条の「権限を有する司法官憲」とは裁判官のみをいい、検察官及び警察官は含まれない。」

7.
「憲法第37条第1項では迅速な裁判を受ける権利を保障しているが、その意味は迅速な裁判を一般的に保障するために必要な立法及び司法行政上の措置を設けるべきことを要請したものであり、本条により直接に被告人を救済することはできないとするのが判例である。」

(引用終わり)

(憲法正誤問題終わり)

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正解は以下です。

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正解は以下です。


正解:

1. 妥当ではない。

 31条は行政手続にも準用(通説)、類推適用ないし直接適用(有力説)されるとするのが一般的見解です。

 判例(最大判平4.7.1)も、憲法31条が一定の場合に、行政手続に準用ないし適用されるとしておりますが、

常にされるわけではなく、

(よって刑事手続と同様というわけではありません。)

また、準用ないし適用される場合であっても、

行政処分によって制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、当該制限によって達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量し、

行政処分の相手方に事前告知・弁解・防御の機会を与えるか否かを決定されるべきと判示しています。

 問題文は「刑事手続と同様に」「公益の内容・程度を問わず」とあり、上記判示と相反する内容ですから、妥当ではありません。
 
2. 妥当ではない。


 判例(最大判昭23.7.29)は、裁判上、必要適切な証人だけを喚問すればよく、被告人が申請した全ての証人を喚問する必要はないとしています。よって選択肢2の内容は妥当ではありません。

3.妥当ではない。

 有罪判決を受けた被告人に証人喚問に要した費用負担を命ずることは差し支えないとするのが判例(最判昭23.12.27)の立場です。よって選択肢3の内容は妥当ではありません。

4.妥当である。

 判例(最大判昭32.2.20)は、氏名は憲法第38条第1項でいう不利益な事項ではないとしています。

5.妥当である。

 判例(最大判昭25.9.27)は、39条上の「既に無罪とされた」という文言を、下級審判決ではなく、確定された無罪判決ととらえ、ゆえに上訴は憲法に違反しないとしています。

6.妥当である。

 憲法33条における「司法官憲」とは、裁判官のことを指します。検察官及び警察官は含まれません。

33条は、犯罪捜査機関に対して、裁判官がチェック機能を果たすことにより、国民の人身の自由を保護しようとする趣旨の条文ですから当然だということになります。

7.妥当ではない。


  判例(最大判昭47.12.20)は、

「憲法37条1項は、単に迅速な裁判を一般的に保障するために必要な立法上および司法行政上の措置をとるべきことを要請するにとどまらず、さらに個々の刑事事件について、現実に右の保障に明らかに反し、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判をうける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が生じた場合には、その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべきことをも認めている趣旨の規定である。」

と判示しており、選択肢7問題文のような、

「抽象的権利説ないしプログラム規定説」の立場にはなく、

37条1項により直接に被告人を救済することができるとする「具体的権利説」の立場にあります。

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 憲法37条1項は、以下のように規定しています。

「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。」

 これは起訴後の被告人には「迅速な裁判」を受ける権利があるということを規定しているわけですが、

37条1項でいう公平な裁判とは、

判例(最大判昭23.5.5)によると、

「構成其他において偏頗(へんぱ)の惧なき裁判所(裁判官の除斥、忌避及び回避制度等がある)の裁判という意味である。」

とされています。

 また、公開裁判とは、憲法82条1項で定める「対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ」裁判をいうとされています。

 37条1項に関する論点としては、

「迅速な裁判を受ける権利」が、プログラム規定であるのか、抽象的権利であるのか、具体的権利であるのかという問題があります。

 プログラム規定であるとする論者は、上記権利は、確かに憲法上の基本的人権ではあるが、

そもそも適正な裁判をしようと思ったら時間がかかるものだし、

何を持って迅速であるのかよくわからない、

また刑事訴訟法に

「迅速な裁判を受ける権利」に関する規定がないこと等を理由に、

37条1項は、当該権利を一般的に保障するために必要な立法上及び司法行政上の措置を要請するものに過ぎないとします。

 しかし、基本的人権であると認めながらも、刑事訴訟法という憲法よりも下位にある法律に定めがないからといって、

抽象的ないし具体的権利性を認めないのもおかしな話です。

 そこで、通説は、著しい審理の遅延があり、被告人の権利侵害があると認められるような異常な事態が発生したような場合については、

憲法37条1項を直接の根拠として、

刑事訴訟法337条4号の規定に基づく「免訴判決」(同法338条4号に基づく「公訴棄却判決」によるべきであるとする説もあります。判例は免訴判決によるものとしています。)

によって審理を打ち切るべきであるとする「具体的権利説」の立場にあります。

 判例(最大判昭47.12.20)も同趣旨の立場にあり、

「憲法37条1項は、単に迅速な裁判を一般的に保障するために必要な立法上および司法行政上の措置をとるべきことを要請するにとどまらず、さらに個々の刑事事件について、現実に右の保障に明らかに反し、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判をうける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が生じた場合には、その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべきことをも認めている趣旨の規定である。」

と判示しています。

 さらに判例は、なにをもって遅延しているとするのかについては、

「具体的刑事事件における審理の遅延が迅速な裁判の保障条項に反する事態に至つているか否かは、遅延の期間のみによつて一律に判断されるべきではなく、遅延の原因と理由などを勘案して、その遅延がやむをえないものと認められないかどうか、これにより右の保障条項がまもろうとしている諸利益がどの程度実際に害せられているかなど諸般の情況を総合的に判断して決せられなければならず、事件が複雑なために、結果として審理に長年月を要した場合はもちろん、被告人の逃亡、出廷拒否または審理引延しなど遅延の主たる原因が被告人側にあつた場合には、たとえその審理に長年月を要したとしても、迅速な裁判をうける被告人の権利が侵害されたということはできない。」

としています。

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 憲法37条2項は、

「刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。」

と規定しています。

 検察側が証人に証言させるのはいいのですが、被告人が一切その証人に反対尋問ができないということになると困りますね。

 被告人にとって不利なことをベラベラとしゃべられ、それについて被告人が一切反論できないという裁判は決して公平なものとはいえません。

 そこで37条2項前段は、被告人に反対尋問の機会が与えられなかったような場合の証人の証言に関しては証拠能力は認めませんという趣旨の内容だと解されています。

 刑事訴訟法(320条1項)上の伝聞証拠禁止の原則

(伝聞(また聞き)による証拠は、証拠能力が認められないとするもの)

は37条2項前段に基づくものであるとされています。

 2項後段は、被告人にとって有利な証人の喚問ができる権利を保障するものであるとされています。

 ただ、判例(最大判昭23.7.29)は、この場合であっても、裁判上、必要適切な証人だけを喚問すればよく、被告人が申請した全ての証人を喚問する必要はないとしています。

 また、公費でとありますが、有罪判決を受けた被告人に訴訟費用負担を命ずることは差し支えないとする考え方が一般的です。

 なお、これらの権利は被疑者には認められないと解されています。

 証人について、

学説は、

37条2項前段上の証人とは「被告人に不利な証人」、同条同項後段の承認は「被告人にとって有利な証人」を指すと考え(実質的意義の証人)、

当該証人が法廷内で証言するしないに関わらず、法廷外でなされた供述に対しても、被告人の反対尋問権は保障されるとします。

 しかし、判例は、宣誓して証言する者(形式的意義の証人:つまり法廷で証言する証人)をいうとし、

法廷外でなされた供述に対する被告人の反対尋問権については原則的に認めないという立場にあります。

 もし、法廷外でなされた供述に対し、尋問したいのであれば、37条2項後段で、当該供述をした人を引っ張ってきて尋問すればいいだけの話なので、

法廷外でなされた供述に対する被告人の反対尋問権をわざわざ認める必要はないとするのがその理由になります。

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 憲法38条2項は、「強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。」と規定しています。
 
 また、同条3項は、「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。」と規定しています。

 これにより、自白の証拠能力・証明力が制限され、38条1項の「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」という権利の保障の確実性を高め、冤罪の温床となる強引な捜査を防止しようとしています。

 なお、同条に関連し、判例(最大判昭23.7.29)は、「公判廷における任意の自白は、憲法38条3項上の「本人の自白」には含まれない。」としています。
 
 憲法39条は、「何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。」と規定しています。

 同条前段前半部分は、事後法の禁止ないしは遡及処罰の禁止と呼ばれています。

 今、成年者ならお酒は飲めますね。

で、皆さんが今飲んでいるとします。

ところが、将来禁酒法ができ、当該禁酒法で、過去の飲酒歴を罰せられるということになるとたまったものではありませんね。

 将来の未知の法律により現在が制約されるとするならば、私達は今、何もできなくなります。

 石のように固まって毎日を過ごさなければなりません。

 そんなバカな話はありませんから、遡及処罰の禁止は当然のことといってよいことでしょう。

 また、この原則は罪刑法定主義の内容でもあり、憲法31条とも被る部分でもあります。

 同条前段後半部分については、

一事不再理(被告人にとって不利な内容に、一度「確定」した判決を変更することの禁止:大陸法的な発想)

を定めているという見解と、

二重の危険(同じ犯罪につき再度刑事裁判を受けること:英米法的な発想:ダブル・ジョパディー:Double- Jeopardy:トワイス・ジョパディー:Twice Jeopardy)の禁止を定めているという見解とに分かれます。

 また同条後段も、同じく一事不再理を定めたものだ、二重の危険の禁止ないし二重処罰の禁止(ひとつの犯罪につき重ねて刑事上の責任を問わない)を定めたものだという見解に分かれています。

    39条前段後半       39条後段


1.説  一事不再理       一事不再理
2.説  一事不再理      二重処罰の禁止
3.説 二重の危険の禁止   二重の危険の禁止

 どの説をとるかで違いが出てくるのは、検察官による上訴(控訴等)が違憲か否かという議論においてです。

 例えば上記1.説(一事不再理説)によると、上訴は合憲と解され、ところが、3.説(二重の危険説)によると違憲となる可能性があります。

 英米法では、二重の危険禁止原則に基づき、上訴は禁止され、下級審の陪審裁判に対する判決に対して検察官が有罪ないしより重い刑の判決を求めることは禁止されているからです。

 しかしながら、判例(最大判昭25.9.27)は、39条上の「既に無罪とされた」という文言を、

下級審判決ではなく、確定された無罪判決

(控訴されなかった第一審判決、上告されなかった第二審判決、上告審判決)

ととらえ、ゆえに上訴は憲法に違反しないとし、以下のように判示しています。

「元来一時不再理の原則は、何人も同じ犯行について、二度以上罪の有無に關する裁判を受ける危険に曝さるべきものではないという根本思想に基くことは言うをまたぬ。

そして、その危険とは、同一の事件においては、訴訟手続の開始から終末に至るまでの一つの継続的状態と見るを相当とする。

されば、一審の手続も控訴審の手続もまた、上告審のそれも同じ事件においては、継続せる一つの危険の各部分たるにすぎないのである。

従って同じ事件においては、いかなる段階においても唯一の危険があるのみであつて、

そこには二重危険(ダブル、ジェバーディ)ないし二度危険(ワイス、ジェバーディ)というものは存在しない。

それ故に、下級審における無罪又は有罪判決に對し、検察官が上訴をなし有罪又はより重き刑の判決を求めることは、

被告人を二重の危険に曝すものでもなく、従ってまた憲法第39条に違反して重ねて刑事上の責任を問うものでもないと言わなければならぬ。」

 これによると、39条前段後半・39条後段の解釈を「一事不再理説」・「二重の危険説」等いずれの立場によるとしても結論としては大差がなくなることになります。

 なお、刑事事件における再審

(一定の要件を満たす重大な理由がある場合に、確定判決につき再審理を行なうこと:刑事訴訟法435条以下)

は、

「有罪の言渡をした確定判決に対して、その言渡を受けた者の利益のために、これをすることができる。」となっており、

これはまさに、一事不再理原則の表れといえます。

 39条の「重ねて刑事上の責任を問わない」(二重処罰禁止)という部分で問題となるのが、以下のような論点です。

 一事不再理は、再度の公訴提起を許さないという観点からの考えですが、二重処罰禁止は、二重に罰を科せられないという観点からの考えです。

 ゆえに二重処罰禁止の観点からみた場合、刑罰と行政上の秩序罰が重複した場合に許されるか否かという問題が浮上します。

 結論からいうと、学説は重複しても問題ないと考えています。

 なぜなら、39条は「重ねて「刑事上」の責任を問われない」という文言になっており、行政の秩序罰は、刑事上の責任とはいえないからというのが理由になります。

 判例(最判昭39.6.5)も、「両者は目的、要件及び実現の手続を異にし、必ずしも二者択一の関係にあるものではなく併料を妨げないと解すべき」であるとしています。

 また、判例(最大判昭33.4.30)は、加算税と罰金刑との併料についても、ほぼ同様の理由により、併料は認められると解しています。

 行政書士試験には刑事法は出題されず、刑事手続に関することもなじみが薄いので、受験生にとっては、日本国憲法上の刑事手続上の権利保障に関する規定はハードに感じるかもしれません。

 しかし、受験生のほとんどが苦手とする部分ですから、逆に得意にしてしまえば、有利になるかと思います。

 日本国憲法上における刑事手続上の権利保障については、ここまでみてきたように非常に詳細に定められています。

これは、世界に類をみないことで、他国憲法ではここまで詳細な規定は置かれていません。

 それだけ、戦前の刑事手続上における人権侵害が酷く、その反省から日本国憲法ではここまでの規定が置かれるようになったということです。

 被疑者となっただけで、まだ逮捕や起訴すらされてない段階から、犯人確定のような扱いをする風潮が日本には今だ見られるわけですが、

日本国憲法には詳細な刑事手続上の権利保障が置かれても、人々の刑事手続上の人権意識はまだ熟成されていないような気もしないでもないです・・。

 しかし、行政書士は刑事告訴・告発業務に携わることもある職能ですので、薄い刑事手続上の人権意識しかないということではとても困るものだと思います。

 実務に就くことを考えてらっしゃる方は、この分野(刑事法分野)についても精通しておく必要があるわけですが、

まずは刑事訴訟法の基礎でもある憲法の刑事手続上の権利保障規定についても、しっかりと学習しておくことをお勧めいたします。

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